オルタナティブロック再入門:90年代の“自由な音”が今も色あせない理由

音楽コラム・考察

1. 導入:深夜のタワレコで交わされた「オルタナ論争」

「ニルヴァーナは、果たしてオルタナなのか?」

かつてタワレコ店員として店頭に立っていた頃、閉店後の売り場でスタッフとこんな議論を戦わせたことがあります。「売れすぎて商業主義のど真ん中に行ったバンドを、果たしてアンチテーゼである『オルタナ』と呼べるのか?」という問い。

しかし、一人のギタリストとして、そして現場でその熱狂を売ってきた人間として、私の答えはNOです。Nirvanaこそ、オルタナの中のオルタナである。 私は今でもそう確信しています。

なぜなら、彼らの本質は「売上」ではなく「闘争」にあるからです。当時のメインストリームを支配していた、着飾ったメタルや派手なハードロックに対する最大のカウンターとして、ボロボロのネルシャツでステージに立ち、既存の価値観を破壊して勝利した。この「精神性」こそがオルタナの正体なのです。

2. ギタリストが紐解く、カート・コバーンの「あえて見せない」美学

ギターを弾く人間ならわかるはずですが、カート・コバーンの凄みは、実はその卓越した「引き算」のセンスにあります。

彼は決してテクニックがないわけではありません。むしろ、随所に光る独特なコード感やリフの構成力は、かなりの音楽的素養を感じさせます。しかし、彼は当時のメタルヒーローのような「見せびらかすソロ」を徹底的に捨てた。感情を爆発させるフィードバックノイズや、シンプルすぎるゆえに突き刺さる旋律を選んだのです。

その「技術をひけらかさない反骨心」こそが、当時のギターキッズたちの心に火をつけた。完璧すぎる音への疲れが、あの歪んだ不完全な音を求めていたのです。

3. 【考察】なぜオルタナを聴くなら「時代背景」が必要なのか

オルタナティブロックをより深く味わうなら、当時のメインストリームである「華やかなメタル/ハードロック」とセットで聴くことをおすすめします。

  • 対比の妙: 光が強ければ影が濃くなるように、当時の豪華絢爛な音楽シーンがあったからこそ、オルタナの「泥臭さ」が際立ちました。
  • 店員の目線から: タワレコの棚でも、メタルの新譜の隣にニルヴァーナやパールのジャムを置くと、明らかに「空気の色」が違って見えたのを覚えています。

4. 元店員が選ぶ「これぞオルタナ」の精神を宿した名盤3選

  • Nirvana『Nevermind』: 言わずと知れた金字塔。店員時代、補充しても補充しても棚が空になった伝説の1枚です。
  • Radiohead『The Bends』: ギターオリエンテッドでありながら、内省的なオルタナの深化を感じさせる。
  • SONIC YOUTH『GOO』:ノイジーなギターが最高ででもポップな音もありバランス最高

5. 結論:AI時代だからこそ、不完全な「人間臭い音」を

今、AIが完璧なコード進行やリズムを1秒で作れる時代になりました。しかし、私たちが今も90年代のザラついた音に惹かれるのは、そこに「意志」と「葛藤」があるからです。

オルタナティブロックとは、単なるジャンルではなく「既存の枠組みに中指を立てる姿勢」そのもの。情報が溢れる令和の今こそ、この自由で不完全な音に耳を傾けてみませんか。

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